標高で変わる土地の気候や植生

山林や遊休地の購入を考える際は、土地の標高も考慮したい要素のひとつになります。

 

近年は広域合併して生まれた市町が多いため、同じ自治体の中でも場所によって大きな標高差が生まれるケースも少なくありません。

標高の違いは気候や植生の違いとなってあらわれ、その土地の使用にもおおきく影響を与えます。

 

今回はそんな、標高で変わる土地の気候や植生について考えていきたいと思います。

 

標高100メートルで0.6℃ 程度の気温差に

市役所がある市街地では雨が降っていても、同じ市内の山間部では真っ白な雪景色が展開…。

冬場にこんな光景に出会ったことはないでしょうか。

 

これは標高が100メートル上がると、気温が約0.6℃下がるという特性があるためです。

 

例えば、移住先や別荘地として根強い人気があり、近年はキャンプ場の新規開設も増えている八ケ岳南麓の山梨県北杜市の場合で考えてみましょう。

もっとも標高が低い市役所の付近(標高約470メートル)と、もっとも標高が高い居住地区となる清里高原の一部地域では、約1,000メートルの標高差があります。

 

単純計算で、ふたつの地域の気温差は6℃ほど。

そのため市街地では雨やみぞれでも、清里高原など標高が高いエリアでは降雪になっている光景がしばしば見られます。

清里高原付近

 

市街地付近

2月中旬の同じ日の朝の光景

 

また同市は8町村が合併したため、市域が非常に広く、天気予報をみても、自分が知りたい実際の天候とずれている場合が少なくありません。

 

北杜市以外でも、同じように広域合併した自治体では、こうしたケースがおおいため十分な注意が必要です。

四季を通してその土地に足を運んでみたり、住んでいる人に直接聞いてみたりすることが、実際の気候や風土を知る近道となります。

 

標高を調べるのに便利な地図アプリ

標高を知るのに役立つのがスマホに無料でインストールできる地図アプリ。

 

いくつか種類がありますが、国土地理院発行の25,000分の1地形図や、スマホのGPS機能と連動した「Geographica」(ジオグラフィカ)というアプリを筆者は愛用しています。

 

スマホの位置情報サービスをオンにすると現在地の標高が示されるほか、現在地以外の標高についても、知りたい場所を画面上に表示できます。

そして、地図上に示されている10メートル間隔の等高線を読み取れば簡単に標高を調べることができるのです。

 

標高のほかにも、地形に応じて付けられた陰影や、等高線に基づいて、尾根や沢、窪地といった地形の特徴を読み取れるほか、

家屋や道路、林道、登山道、店舗などの主要な施設も表示されるため、その土地の地勢や周辺環境を知るうえで大きな助けになります。

標高を簡単に確認できる地図アプリ「Geographica

 

 

また、山沿いや内陸部の地域などでは、主要道路沿いの道路標識や観光施設に、その地点の標高が明記されていることもあります。

 

海岸近くの地域の場合、標高の高低は津波発生時の危険性にも大きく影響します。

一見すると海岸線から遠く離れているように感じられる場所でも、意外と標高が低く、津波発生時の危険性が高い可能性もあります。

 

海沿いの地域で土地探しをする際は、自治体が指定している避難場所を含めて、土地の標高も意識したいポイントです。

なお沿岸部の地域では標高とほぼ同じ意味の「海抜」という言葉を使って、その土地の海面からの高さを表記しているケースが多いようです。

観光施設の入り口に張られた標高を示すシール

 

標高で変わる生態系

標高に応じた気候の変化に伴い、動植物の分布といった生態系も変わっていきます。

 

こうした標高の変化に伴う植生などの変化は垂直分布と呼ばれます。

例えば八ケ岳南麓の場合、里山や集落近くの森ではコナラやクヌギ、エノキ、ケヤキなどが多く見られますが、標高1,000メートルを超えると、ミズナラやシラカバ、カラマツが目立ってきます。

 

カラマツの場合、ほとんどが戦後、人の手によって植林されたものですが、標高が高い地域の冷涼乾燥な気候に適した木といえます。

一方、伝統的な日本家屋の梁(はり)など、かつて建材として盛んに使われたアカマツは、八ケ岳山麓の場合、里山から標高1,000メートル以上のエリアまで、幅広い標高帯に分布している特徴があります。

 

野生動物の分布も、標高による違いが見られます。

例えば農作物被害が問題になっているニホンザルは、八ケ岳南麓では、標高700メートル前後の地域では民家の近くなどで頻繁に群れが出没していますが、標高1,000メートルを超える場所では出現の話は聞かれません。

 

害虫類についても同様の傾向です。

二ホンジカやイノシシなどの個体数増加に伴って分布が増えている吸血性のマダニは、標高が比較的低い地域の方が生息密度が高い印象を受けます。

蚊やゴキブリについても、標高1,000メートルを超える地域では少なく、標高が下がるにつれて多くなるようです。

 

これは冬場の気温が、越冬できるかできないかに影響するためとみられます。

ただ近年の温暖化傾向に伴い、こうした虫たちの分布域が標高が高いエリアに広がっているとの見方もあります。

野生動物による農林被害を防ぐため、幹線道路沿いに設置された防護柵\

 

標高が高いほど快適?

近年は複層ガラスの使用をはじめとする、高気密高断熱な住宅の普及で、従来は寒冷で居住に適さないとされたようなエリアでも定住者が多く見られるようになりました。

 

ただし、建築年代が古めの中古住宅を購入した場合は、リフォームなどでしっかりとした断熱対策を施さないと、冬場の夜間は室内でもコップの水が凍るような厳しい寒さに見舞われる可能性があります。

 

断熱性能が低い住宅の場合、高機能の暖房設備や薪ストーブなどを使っても、暖かい空気が屋根や窓から屋外に逃げてしまい、暖房効果が半減してしまいます。

逆に、建物の断熱や室内の寒さ対策をしっかりと施せば、夏場はエアコンに頼らなくても快適に過ごせる魅力があります。

 

筆者の近くにも、標高約1,400メートルの清里高原で、夏向きに造られた中古別荘を安価で購入し、二重窓の設置など万全な断熱対策を自分自身で施して、夏冬問わず快適な暮らしを楽しんでいるシニア世代の人もいます。

 

もちろん気温や植生は、標高だけでなく、その場所の緯度や立地(太平洋側の地域か日本海側の地域かなど)にも大きく関係します。

ただ、近年は夏場の気温上昇で、これまでエアコンの使用が考えられなかったような寒冷地などでも、夏場の日中はエアコン使用が当たり前の光景になりつつあるケースもあります。

 

定住か別荘利用か、また夏場を中心とするキャンプなどでのスポット利用か。

土地の利用用途にもよりますが、今後も全国的に酷暑の日が増える予測もあるなか、なるべく夏場の気温が上がりにくいエリアに土地を確保したい、と考える人も増えていくかもしれませんね。

 

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