3連休が集中する9月と10月。
残暑も続き、水辺や野山などのフィールドに出掛ける機会も増えそうです。
今回のテーマは「フィールドで遭遇しやすい危険10選」。
前編は「危険な生き物」を取り上げます。
(ライター=渕上健太)
身近な危険生物 5選!
①マダニ
国内に生息する危険生物の中でも生息密度が高いのがマダニ。
動物やヒトの皮膚に食い付いて血を吸い、吸血すると身体が大きく膨らみます。
マダニが怖いのは、ダニ媒介性脳炎や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)といったウイルスを保有している可能性があること。
吸血時にこうしたウイルスに感染する恐れがあります。
草むらや笹やぶに入るときは「マダニがいる」という意識を持つことが大切。
長袖、長ズボンの着用や首にタオルを巻くなど、なるべく肌を露出させない服装を選び、ズボンの裾をブーツの足首部分にかぶせたり、足首にスパッツを履いたりしてダニの侵入を防ぎます。
私はフィールドから戻って車に乗ったり、室内に入ったりする前にはズボンの裾をブラシで払ったりして、マダニを持ち込まないように気を付けています。
またマダニ避けの忌避剤もドラッグストアなどで販売されています。
ペットの身体や衣服に付いたマダニはセロテープやガムテープで付着させると安全に殺すことができます。 マダニは耳の裏や脇など、目立ちにくくて皮膚がやわらかい部分に食い付いて吸血することが多いようです。
このためフィールドに出掛けた日はマダニが付着していないかどうかを入浴中などにチェックしましょう。
万一、マダニが皮膚に食い付いているのを見つけた場合は、爪先などでつまんで取り除こうとすると、口器付近が皮膚の中に残ってしまう場合があります。
自治体などのサイトには、ピンセットなどを使ってマダニの身体がちぎれないように慎重に引き抜く方法や、マダニと周辺の皮膚を市販のワセリンで覆い、窒息させてから取る方法(ワセリン法)などが紹介されています。
ただマダニを取り除いた後に、傷口のかゆみや発熱、食欲低下などの症状があった場合はすぐに医療機関へ受診するようにします。

愛犬の身体に付いていたマダニ。ペットからヒトの身体に移ることもある
②ヤマビル
マダニと同じように、動物やヒトの皮膚に食い付いて吸血します。
シカなどの野生動物の増加に伴って生息範囲を広げているようです。
生き物から発せられる体温などを感知して移動する性質があり、いつのまにか皮膚に食い付いて吸血している姿は、思わず叫び声を挙げてしまうほどのグロテスクさ…。
マダニと同じように吸血前は小さく、血を吸われていても痛みなどを感じない場合が多いため、気付きにくいのが特徴です。
湿気が高く落ち葉が積もった場所を好み、雨の後には活動が活発になります。
ただマダニと違って危険なウイルスを媒介せず、かまれた後にかゆみが残る程度です。
対策としてはヤマビル対応の市販の忌避剤を靴やズボンなどに散布するのが有効で、食塩水を使っても効果があるとされています。
ヤマビルに食い付かれた後には血が止まらなかったり、かゆみが残ったりする場合があります。
ただ直接的な身体被害よりも、ヤマビルへの警戒や不安で野外での作業や遊びに集中できなくなる精神的ストレスが大きいといえます。
ちょっとかわいそうですが、私の場合、マダニと同じようにヤマビルも見つけ次第、食塩をかけるなどして殺しています。

衣服に付いたヤマビル
③ハチ
毎年夏から秋にかけて増えるのがハチ刺されによる被害。
特に大型で毒性の強いスズメバチは刺された場合、体質などによってはアナフィラキシーショックで死亡する危険があります。
アシナガバチなどの中小型のハチも体質によってはスズメバチ同様のショック症状が出るため注意が必要です。
ハチは基本的には巣やハチ自身を攻撃されない限りは襲いません。
このため身体の周りに飛んできたハチを追い払うのはハチが攻撃的になってしまうため避けます。
野山で仕事をしていると時々、大型のスズメバチが頭や肩の上に止まって身体の上を歩き回りますが、じっとしていればいつの間にか飛び去り、これまで刺されたことはありません(数分間、恐怖に耐える必要はありますが…)。
しかし草刈りをしている最中に、誤って巣の近くで刈払機を回してしまった場合などは、たくさんのハチが突然襲い掛かってきます。
まさにハチの巣を突いたような騒ぎとなり、こうした場合は道具を放り出して猛ダッシュで逃げてハチのテリトリーから少しでも離れるしかありません。
スズメバチの場合、結構しつこく数十メートル先まで追いかけてくることもあります。
積み上げられた枝の間や切り株のウロ、雨が当たりにくい岩肌などはハチの巣ができやすいので特に注意が必要です。
ハチの巣の近くでどうしても作業をする必要があるときは、ちょっとかわいそうですが巣にハチ除けスプレーを噴射して壊滅させてしまうこともあります。
万一刺されたときは有害生物の毒をポンプで吸い出す「ポイズンリムーバー」が有効です。
またドラッグストアで購入できるステロイド系の虫刺され薬もハチ刺されに有効とされていて、持ち歩くようにしています。

特に注意が必要なスズメバチ

ハチ刺され用の軟膏(手前)とマダニ用のワセリン(右奥)、傷口の消毒薬(左奥)
④マムシ
水辺や石垣では毒性の強いマムシにも注意が必要。
マムシは保護色で落ち葉などと見分けにくく、また攻撃性が強いためひとが接近してもなかなか逃げない性質があります。
マムシが生息していそうな場所にサンダル履きなどで入り込むのは避けましょう。
また斜面に手をついたときにかまれる事故も起きているため注意が必要です。
マムシ毒は強毒で死亡例もあります。
万一、かまれた場合はポイズンリムーバーで毒を吸い出すなどの応急処置を施すとともに、一刻も早く医療機関を受診します。

自宅近くの河原で遭遇したマムシ
⑤クマ、イノシシ
私が住む八ケ岳エリアは昔から「クマはいない」と言われていて、クマ対策をして登山をしたり、山仕事に入ったりするひとは少数派です。
クマの生息に適したミズナラやブナなどの広葉樹林が少ないことも一因のようです。
ただ野山に精通した地元のひとによると、、
「昔からときどきクマが現れる場所」が数箇所あるそうです。
そんなことで、私も山に入るときは必ずクマよけの鈴を付けるようにしています。
「山でクマに会う方法」(米田一彦著、山と渓谷社)によると、クマの繁殖期でオスグマの精神が高揚する6月前後は、山菜やタケノコ採りのシーズンとも重なるため、クマとの遭遇による死亡事故が例年多発しているとのこと。
私自身は山でクマに遭ったことはありませんが、実際にクマに遭ったり、襲われたりしたひとの話を聞くと、特に危険なのはお互いが気付かないまま鉢合わせする「ばったり遭遇」と、子連れの母グマとの遭遇のようです。
子連れの動物はクマ以外も含めて警戒心が非常に強く、攻撃モードに転じやすいため注意が必要です。
私自身は見通しが悪くて鈴の音などが届きにくい「林道のカーブ」や「沢の中」などでは特に注意して大声を出したりして、自分の存在をクマに知らせるように心掛けています。
爆竹やクルマのホーンを鳴らすのもヒトの存在を伝えるために効果的です(ただ渓流釣りで沢に入るときは大きな音を出すと魚が逃げてしまう悩ましさもあります)。
イノシシもクマと同様に子連れのときは気が立っています。
イノシシは鋭い牙(きば)を持ち、文字通り、猪突猛進されると致命傷を追う危険があります。
イノシシのの子供のウリ坊は持ち帰りたいほど可愛いですが、子グマと同様、近くに母親がいる可能性が高いため、絶対に近寄らないようにしましょう。
私は犬の散歩中に40メートルほど離れた畑にいる子連れのイノシシと目が合い、うなり声を上げながら突進された経験があります。
20メートルほど接近したところでUターンをして戻ってくれたため事なきを得ましたが、恐怖で思わず身体が固まってしまいました。
イノシシに襲われて大けがをするケースは各地で起きています。

クマ避けの鈴と笛