都会より難しい?!「田舎の家探し」後編

「田舎の家探し」をテーマにした連載の後編。

今回は「0円物件」「契約書なし物件」など筆者が実際に経験したり、見聞きしたりした「都会とはちょっと違う物件探し」の実例を取り上げます。

(ライター=渕上健太)

ケース①散歩で出会ったおばあちゃんの「賃貸料ゼロ物件」

 田舎でときどきあるのが、散歩中などに地元のひとと話していて空き家を教えてもらうケース。

筆者自身も近所のおばあちゃんから推定築60年以上の二階建ての空き家を紹介してもらったことがありました。

室内には古い家財道具がそのまま残されていて、「長年使っていないのでこのままの状態で良ければタダで貸してあげるよ」とのこと。

かつて住んでいた子供のものか、室内には古いぬいぐみも残されていました。

耐震性に不安があり、眺望がないなど立地環境もイマイチ。

室内も荒れていたため断りました。

しかし同じく家探しをしていた以前の職場の同僚に紹介すると入居を希望。

この同僚は自分自身で床を張り替えたり、給湯設備を直したり、さらには薪ストーブも置いたりして、今も家族で暮らしています。

この家の場合、後日談がありました。

同僚によると住み始めた後に、所有者が近所のおばあちゃんではなく、実はその親戚だったことが判明したというのです。

遠方に住むその親戚の方が久しぶりに訪ねてきたところ、自分の家に知らない家族が住んでいてびっくりしたとのこと。

同僚の家族は退去は求められなかったものの、正式な賃貸契約書を作成し、家賃を支払うことになりました。それでも畑付きで一万円以下のようなので格安です。

このように田舎では今でも意外と「いい加減」に家の貸し借りが行われています。

地元のひととの出会い、山菜やキノコの発見。田舎道を散歩しているとさまざまな出会いがある

 

ケース②契約書なしの居抜き物件

これは筆者自身が暮らしている今の住まいの話。

知人から紹介してもらった2DKの間取りの家で、屋根付き駐車場や広い物置小屋も自由に使わせてもらっています。

引っ越しにあたり、大家さんと契約書を交わすものだと思っていましたが、大家さんやその家族に何度お願いしても契約書を作ってもらえませんでした。

おそらく面倒くさかったからだと思います。

「火災など万一のときの責任はどうなるのだろう…」などと当初は不安でしたが、火災保険は大家さん側で入っているとのこと。

引っ越し当初は室内や押し入れに鍋や食器、布団、タンス、ソファー、音楽CDなどが大量に残っている居抜き状態で、不用品の整理にかなりの時間が掛かりました。

結局、元からあった家財道具はすべては片づけられず、現在は自分のものとミックスした状態で暮らしています。

冷蔵庫や洗濯機は元からあったものをそのまま使わせてもらっており、親戚の家に引っ越してきたような感覚に近いかもしれません。

筆者が借りている家の屋根付き車庫。仕事の道具や資材が多いため、屋根付きの車庫や物置を使わせてもらえて大助かり

 

大家さんのおばあちゃんは高齢ですが心身ともに元気で、おかずや畑の野菜をおすそ分けしてくれるなど、いろいろと世話を焼いてくれます。

私も敷地の草刈りをしたり、ちょっとした力仕事のお手伝いをしたりと、なるべくできることをお手伝いするように心掛けています。

ちなみに家賃や光熱水費は大家さんに毎月現金で手渡しをするキャッシュフリーとは対局的なスタイル。

アナログ的でファジィな部分もあり、神経質な人や人間関係がわずらわしいと感じる人には向かないかもしれませんが、私自身は田舎暮らしならではの「お互いさま」の精神を感じながら快適に暮らしています。

 

ケース③タダでもらえる家

「ただでもらえる家や土地があるんだけどいらない?」。

田舎で暮らしていると時々こうした話が寄せられます。

利用されなくなって久しい古い別荘だったり、住民の方がお亡くなりになって空き家になった畑付きの古い民家だったり…と背景はさまざま。

ロケーションや建物の状態、家や敷地の広さなどが希望に合っていれば、まさに棚からぼた餅のような幸運です。

しかしこうした家は傷みが激しかったり、荒れた山や畑に囲まれていてすぐに暮らすのが難しかったりと、手放しで貰い手として立候補しにくい場合がほとんど。

家と土地自体はタダでもらえても、建物や土地の固定資産税が掛かります。

土地に掛かる固定資産税は面積や地目などで異なり、例えば地目が「山林」だと、数百坪の広さでも年間の税額は格安の場合がほとんどですが、宅地の場合は、同じ面積でも一気に上がります。

私と同じ移住組で、家探しをしている知人が先日、「タダでもらえる畑や田んぼ付きの家を紹介されたけど、どうしようか…」と悩んでいました。

いろいろ調べると、その地域で田んぼを所有する場合、水利権に関係する負担金を毎年支払う必要があることがわかり、熟慮の末に断念しました。

一方、リゾート地に多い管理別荘地内の中古物件は、比較的安く販売されていることがあります。ただ管理会社に支払う「管理費」が年間数万から十数万円掛かる場合がほとんど。

家や土地自体は安く入手できても、所有後にさまざまな費用負担が発生する可能性にも考慮する必要があります。

維持管理費などの負担でごみ収集や除雪といったサービスが提供されている管理別荘地

 

住まい探しも自分で「開拓」

取り上げた三つの例は、いずれも筆者自身が経験したり、見聞きしたりしたケースでした。

田舎では家を借りる場合、不動産会社を通さずに家主と直接、やり取りをするケースが少なくないことが都市部との大きな違いといえます。

この場合、多くは家賃は安めの設定ですが、これまで紹介したように「住める状態」にするための室内補修や片付けは自分でやる場合がほとんど。

田舎の家の押し入れや台所には布団や食器などの家財道具が大量に詰め込まれている場合が多いため、それを取捨選択しながら片づけるのはかなりの労力と時間が必要です。

大量の不要品の処分にはお金が掛かることも考えると、ちょっと大げさな表現ですが、都会の引っ越しとは異なる次元の覚悟や気合が求められます。

自治体によっては空き家解消事業の一環で、空き家を売ったり貸したりする場合の家財道具処分費の補助制度を設けている場合もあるので確認してみましょう。

いずれにしても不動産会社を通さず、契約書も交わさないで賃貸する場合、万一の火災発生時や退去時の室内清掃などで大家さんともめる可能性があるため、神経質なひとにはおすすめできません。

大家さんとの相性も大切になります。

不安が残る場合は地元の不動産屋さんなどに仲介を頼む方が無難といえそうです。

フィールドと同じように、家探しも自分で開拓していく気持ちが大切になる

 

ネットに頼るだけでは情報が限られてしまう田舎の物件探し。

前編で取り上げたように、まずは公営住宅に入居するなどして、地域のひとやほかの移住者との交友関係を広げてから気に入った住まいを探すのも一案です。

思うようにいかず、もどかしい思いをすることもありますが、住まい探しも自分で「開拓」する気持ちで田舎暮らしを実践してみてはいかがでしょうか。

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