「美しくて自由でつまり楽しい小屋」
「小屋暮らし」「タイニーハウス」…。
そんな言葉を聞いて胸が高鳴るひとは、きっと多いはず。
今回はプロが語る「自分らしく楽しみたい『小屋ライフ』の魅力」を前後編二回に分けてご紹介します。
(写真提供=土耀舎 ライター=渕上健太)
お話を聞いたのは山梨県北杜市で小屋造りやステンドグラス制作を手掛ける土耀(どよう)舎を主宰する吉田継里(つぐり)さん。
「美しくて自由でつまり楽しい小屋」をコンセプトに、地元産のカラマツやヒノキを使うシンプルな「掘っ立て造り」の小屋をメインに建築し、ファンを広げています。

山梨県北杜市にある土耀舎のアトリエ。吉田さんが建てた小屋の第一号だ
Q 小屋の魅力は何ですか?
―(吉田)「子供のころに家の中に段ボールで小屋を作って遊んだりしましたよね。
それと同じ感覚。小屋に行くことは冒険だと思うんです。
たとえ家から10秒や20秒で行ける庭の一角に建てた小屋でも、そこに行くこと自体が冒険になると楽しい。
子供も大人も関係なく、そんな感覚になれたらいいなと思っています」

土耀舎が小屋とともに力を入れているウッドデッキ
見慣れた空間が冒険心を呼び起こす場所に変身する
Q 小屋造りで大切にしていることは?
―(吉田)「例えば広さが一畳程度の子供用の小屋の場合、子供が大きくなるまでの5年とか10年しか使われないことが多い。
それを造るために地面にコンクリートを流し込む基礎が本当に必要なのか?と思うんです。
すべての物は最終的にゴミになる。
小屋ってあくまで遊びの一つかなと。
だからなるべく環境に配慮したいと考えています」

遊び心があふれる小屋。広さは四畳ほど
Q 掘っ立て造りとは?
―(吉田)「土耀舎の掘っ立て造りは、焚き火で表面を焼き焦がしたカラマツの丸太を土の中に深く埋めて、それを基礎にしています。
だから基礎も含めて最終的に土に還るし、強度的にも十分。
丸太の表面を焼き焦がすのは腐食防止のためです。
掘っ立て造りは昔から行われてきた工法で、木材に詳しい地元の製材所などからもアドバイスをもらって作り方を身に付けました。
掘っ立て造りで新しく建てられた建物も北杜市にはあって、そうしたところも参考にさせてもらいました」

焼き焦がした跡が特徴的な掘っ立て造りの基礎
Q コンクリートの基礎がなくても強度は大丈夫ですか?
―(吉田)「何十年、何百年も昔に建てられた掘っ立て造りの建物が今も残っています。
もちろん補修は重ねられていますが。
土耀舎では床面積に対して掘っ立ての基礎を多めに入れていて、強度的には十分です。
ただ『耐用年数何年』などの数値は出せない。
なので『やっぱり掘っ立ては不安』などというお客さん向けには、コンクリート製の束石を基礎に使う普通の小屋造りもしています」

「美しくて自由でつまり楽しい小屋を造りたい」と語る吉田さん
Q 素人でも小屋造りはできますか?
―(吉田)「もちろんできます!
自分自身はもともとカメラマンで、趣味で自宅の敷地にアトリエ用の小屋を独学で建てて使っていました。
コロナ渦で3カ月間、撮影の仕事がなくなったとき、たまたま自宅の小屋の写真を見た方から小屋造りを頼まれて、本格的に仕事として始めるようになりました。
おすすめは、まずは廃材で作れるような子供の秘密基地のようなサイズの高さ120センチ、一畳程度の広さの小屋から始めてみること。
一日や二日で出来るサイズでも小屋造りの基本が分かります。
子供が大きくなって使わなくなったら中でビールを飲むのも楽しいし、犬小屋に使うためにもらっていったひともいます(笑)。
基本的に床面積が10平方メートル(約3畳分)以下だと建築確認申請が不要なので、自由に楽しむためには『小さい小屋』がぴったりです。
軽トラックの荷台に載せられる180センチ×140センチ程度のサイズの小屋も面白い。
文字通りの『モバイルハウス』です。
ただ軽トラの荷台に載せる場合、高さや重心に気を付けないと走行中に横風で横転しやすいので注意が必要です」

母屋に作られたデッキ。奥は子供用の小屋
次回は「庭に自由を」をテーマに、土耀舎が提案する小屋造りや小屋ライフの楽しみ方をさらに掘り下げます!