冬の田舎暮らしの楽しみ方として、人気が高まっている薪ストーブ。
多くの人が憧れる半面、薪の調達や火災の心配、着火の難しさ、メンテナンスなど、初めてのひとにはハードルが高いのも実情です。
今回は薪ストーブの実践的な使い方やフィールドで手軽に楽しめる利用方法を前後編の二回に分けてご紹介します。
廉価品でも十分!?
今回、薪ストーブ生活についてお話を伺ったのは、前回のコラムにも登場してもらった「DIYの達人」の異名を持つ伊藤輝樹さん。
伊藤さんは元ITエンジニアで現在は山梨県の八ケ岳山麓で林業に従事するかたわら、DIYの腕前を暮らしや仕事に生かしています。
伊藤さんが自宅で使っているのは、最大で長さ約30センチまでの薪を投入できる中型の薪ストーブ。
3年前に購入した中古住宅にあらかじめ設置されていたものです。
安価な中国製から欧米製の高級品までさまざまなタイプがある薪ストーブですが、伊藤家のストーブは大手ホームセンターが取り扱っているオリジナル商品。
本体価格が5万円程度の廉価品です。

伊藤さんが愛用している薪ストーブ
伊藤さんは3年間使った印象について
「高級モデルではありませんが、薪をきれいに無駄なく燃やすための二次燃焼機能が付いており、部屋も汗ばむくらい温まって日常生活には十分。量販タイプなので部品や付属品を入手しやすいメリットもあります」
と評価します。
築約35年の中古住宅に備え付けだったため、過去の使用状況は分かりませんが「いまのところ耐久性も問題ありません」と話します。
薪材は河川敷で行われる支障木の伐採工事で出た不要な丸太の無償配布会に参加したりして調達。
チェーンソーで約30センチの長さに玉切りした後、オノを使って割っています。

その日に使う薪は、ストーブの近くに置いて乾燥させている
朝の日課「点火作業」
夫婦で暮らす伊藤さんは、起床するとまず薪ストーブに火を入れるのが日課。
着火にはバーベキュー用の固形着火剤を使っています。
大小さまざまの薪を数本、ストーブの中に入れ、重ねた薪の間に置いた着火剤に火を付けるとゆっくりと炎が薪に燃え移ります。
「最初のころは丸めた新聞紙を着火剤に使うなどいろいろ試しましたが、火を起こすのに1時間掛かったこともありました。
いまは固形タイプの着火剤に落ち着き、5分で火が付くようになりました。
妻も薪に火を付けるのが好きで、二人で早い者勝ちになります」
と笑顔をみせます。
火起こしのコツとして
「最初から細い薪と太い薪を組み合わせて入れると、細い薪が燃えている間に太い薪が乾燥して少しずつ燃え移り、後から太い薪を足さなくても済むので楽です」
とアドバイス。
さらに「火が起きたら空気口を絞ってストーブ自体に蓄熱させるのが部屋を暖めるポイントです」と教えてくれました。
暖房効率アップにひと工夫
取材した昨年12月初旬、伊藤さん宅の朝の室温は15度でしたが、薪ストーブに火を入れて一時間後に18度まで上がったとのこと。
取材に伺った午前9時半頃は23度とポカポカでした。
「薪ストーブはストーブ本体を含めてゆっくりと温まっていくのが特徴です」と伊藤さん。
急いで部屋を暖めるのは苦手。
しかし一度温まると、じんわりと室内を温め続けてくれるのが薪ストーブの魅力だといいます。
伊藤さん宅は二階部分にロフトがある吹き抜け構造。
このため、一階リビングに置いた薪ストーブで温まった空気は、どんどんロフト部分に抜けていき、一階リビングは思うように暖まらないこともあるそうです。そこで天井に取り付けられた大型のシーリングファンを回したり、薪ストーブの横に置いた扇風機で天井に向けて風を送ったりして室温を均質に保つように工夫。
薪ストーブで暖めにくい洗面所ではファンヒーターを使っています。

室温を均質に保つために置かれた扇風機
伊藤さんは薪ストーブの特徴として
「室内の湿度が一定以下まで下がると、薪を燃やしても部屋が温まりにくくなるように感じます」と話します。
「おそらく水の分子が空気中に存在することで空気の密度が高まり、室内の空気を暖めやすくするのではないでしょうか」。
一方、薪ストーブを燃やすと室内が乾燥気味になるため、業務用の加湿器を使って湿度を保っているそうです。
逆に雨などで湿気がちな日は室内の乾燥に役立つのも薪ストーブの特徴といえそうです。
薪ストーブの使い方のちょっとしたコツも教えてくれました。
「炉内に残った灰や燃え残りの炭は、掃除のときにすべてかき出さず、炉内に置く鉄製の薪置き台(ロストル)を覆うくらいに残しておきます。
こうするとストーブ自体の蓄熱効果が高まり、さらに薪置き台自体に直火が当たらないため、薪置き台の劣化も抑えられるようです」
とアドバイスしてくれました。

蓄熱のために灰などを残してあるストーブ内部
大変?!でも大切! 煙突掃除
薪ストーブを使う上で欠かせないのが煙突掃除。
これを怠ると煙突内部にススやタールなどがたまり、最悪の場合は煙突から出火する「煙道火災」が起きてしまいます。
煙突掃除の頻度は、薪ストーブと煙突の性能や種類、設置方法、燃やす薪の種類や乾燥具合によっても変わってきます。
掃除には煙突の中に通してススなどをこすり取る専用のワイヤーブラシを使いますが、専門業者に頼んで掃除をしてもらうひともいます。
伊藤さんの場合、使っている煙突は「シングル」と呼ばれる一重タイプのため、「ダブル」(二重)のタイプと比べるとススがたまりやすくなります。
さらにカラマツやアカマツといった針葉樹の薪を燃やすことも多く、広葉樹と比べてススやタールが煙突にたまりやすい傾向にあるといいます。

薪ストーブライフに欠かせない煙突掃除
「高さ8メートルほどまで伸ばせるハシゴを買って、シーズン中に二回は煙突の中を掃除しています。正直、すごく大変です」と伊藤さん。
薪の用意とともに、薪ストーブユーザーにとって避けて通れない大仕事が煙突掃除といえそうです。
調理にも活躍!リラックス効果も♪
部屋を暖めるだけのエアコンやファンヒーターなどと異なり、調理にも大活躍するのが薪ストーブの大きな魅力。
伊藤さん宅では万古焼の「石焼き芋器」を薪ストーブの上に載せて石焼き芋作りを楽しむのが冬の定番だそうです。
取材日もほっこりとした焼き芋が鍋の中に納まっていました。
薪ストーブの上にダッジオーブンを載せて煮込み料理をすることもあり、ガス代節減にも役立っているそうです。

薪ストーブの上で、ほくほくに仕上がった焼き芋
「薪ストーブを使うと家の中でもアウトドアをしている感覚を楽しめます。
メラメラと燃えている炎を眺めているだけで、時間がたつのを忘れてしまいます」。
10月から翌年5月頃まで薪ストーブを使うという伊藤さん夫妻。
すっかり冬の暮らしに欠かせない存在となった魅力を語ってくれました。

薪ストーブライフを楽しむ伊藤さん
次回の後編ではキャンプや自宅のテラス、ウッドデッキなどで手軽に楽しめるポータブル型の薪ストーブに着目します!