自分で木を伐れる?!(伐採のキホン)

山林を手に入れてプライベートキャンプや小屋作りなどに挑戦したい!そんな憧れを持つ人が増えています。

伐採や伐根が済んでいない土地は、坪単価が安いため、「なるべくお金を掛けずに土地を手に入れたい」という人もいます。

 

また「家の敷地の木が大きくなり過ぎて困った・・・」という声も多く聞かれます。そんなときに頭に浮ぶのが「自分で木を伐ることができるのか?」という疑問。

今回は伐採のキホンを取り上げます。

 

木を伐るのは危険?

山の中で大きなスギやヒノキを、チェーンソーを使って伐採する場面をテレビなどで見た方も多いと思います。

実際、林業現場では、日々そうした作業が行われています。「チェーンソーも使うし、木も大きいし、危なそう…」。そうしたイメージを持たれることが多いですが「ホントに危ない」というのが実情です。

 

チェーンソーという高速回転のむき出しの刃物を身体の近くで使うことに加え、場合によっては重さが数トン、高さ20メートル以上に及ぶ木を、ちっぽけなチェーンソーひとつで切り倒すという行為自体に、さまざまなリスクがあります。

このため、大けがや死亡事故が毎年各地で絶えません。ただ知識と経験があればそうしたリスクを大きく減らせるのも事実です。

 

安全に木を伐るために個人的に大切だと考えていることのひとつが、自分自身の持つ感覚。

例えば高さ3~4メートル前後で、大人の腕くらいの太さの木なら、感覚的に「これくらいなら、ノコギリを使って自分でも伐れそう」と思うひとは多いと思います。

また例えば高さが5メートル以上でも、細くて軽い竹なら「これは自分でも伐れそうだ」と感じることもあると思います。基本的にそうした感覚は信頼できるのではないでしょうか。

 

もちろん、絶対に事故が起きないとは言い切れず、また体格や筋力によっても感じ方は変わります。

自分自身の身体感覚と想像力を働かせた結果、「もしかしたら失敗するかも…」「うまいくか微妙・・・」という結論になれば、絶対に過信せず、林業会社や造園会社といったプロに相談するのが無難です。

 

さまざまな危険がある伐採作業

 

基礎を学べる場を活用

自分で木を伐る場合、事故を防ぐには伐倒の基本を身に付けることが何より大切です。

そこで役立つのが、各地の公共機関などがチェーンソーによる伐木作業者向けに開催している労働安全衛生規則に基づく特別教育。

 

通常二日間の日程で、座学と実技を通してチェーンソーを使って木を伐るための知識と基本技術を学びます。

この特別教育は、林業者や造園業者など仕事として伐採に携わる人に受講が義務付けられています。

 

自分の敷地などで個人的に木を伐る場合、受講は必須ではありません。

ただ多少の費用は掛かっても、初めて木を伐ったり、チェーンソーに触れたりするひとには、第一歩を踏み出すための貴重な場になるはずです。

各地で開かれているチェーンソー作業者向けの講習会

 

ただ実際に木を伐る技術は現場での実践を通してでしか、なかなか身に付かないもの。

そこで各地で活動している里山整備のNPO法人や、薪ストーブ愛好者でつくる「薪の会」といったグループに参加してみることで、伐採や玉切りといったチェーンソー技術を身に付けられる場合があります。

身近にそうしたグループがあれば、問い合わせてみてもよいでしょう。

 

基本の伐採技術

基本的な伐採技術は

①「小径木向きの受け口を作らない伐り方」②「中~大径木向けの受け口を作る伐り方」

の二つに大別されます。

①「小径木向きの受け口を作らない伐り方」

腕の太さ程度の細い木や、枝のせん定などで多用される伐り方です。

最初に木の重心側に幹の直径の半分程度の深さまでチェーンソーやノコギリで切れ込みを入れます。

その後、最初に入れた切れ込みの逆側(重心の反対側)から1~2センチ程、高い位置に切れ込みを入れて、重心の方向に手で押しながら倒す方法です。

 

2箇所の切れ込みを段違いで切ることから「ダンチ」などと呼ばれることもあります。

2箇所の切れ込みは、ともに鉛直方向に対して水平に入れ、必ず2つの切れ込みが数センチ重なるようにします。

この伐り方は基本的に、木の重心側(木が傾いている方向)に倒す場合に適しています。木の繊維が縦方向に裂けて、ぽっきりと折れるように倒れるのが特徴です。

段違いに切る方法は小径木の伐倒に向く

 

木の繊維が縦方向に裂けた切り口

 

②「中~大径木向けの受け口を作る伐り方」

狙った伐倒方向に向けて三角形の受け口を作った後、逆側から切り進める(追い口を入れる)ことで、木全体の重心を少しずつ受け口側に移しながら狙った方向に倒します。

追い口は幹全体をすべて切りきるのではなく、「つる」と呼ばれる切り残しの部分を左右均等の幅になるようにして必ず残します。

 

つるの部分の幹の繊維が、左右均等にゆっくりと引きちぎられながら木が傾いていくことで、狙った方向に正確に倒れていく・・・。そんなイメージです。

各種テキストなどで紹介されている伐り方は次の通りです。ただ実際は木の種類や太さ、傾きなどで伐り方を少しずつ変えることが一般的です。

 

 ・受け口の深さは木の根元付近の直径の4分の1以上

 ・受け口の斜め切りは30~45度の角度で切る

 ・受け口の下切りは水平に切る

 ・追い口は、受け口の高さの下から3分の2程度の位置を水平に切る

 ・つるの幅が木の根元付近の直径の10分の1程度になることを目安に、追い口を切る幅を調整する

受け口を作る伐り方の模式図(厚生労働省webサイトより引用)

 

受け口を作った後、追い口を入れている様子

 

この伐り方の場合、受け口の向きが重心の方向と同じだとスムーズに伐り倒せます。

しかし両者がずれている場合、追い口を入れても木が狙った方向に倒れず、予想外の方向に傾いてきて大きな事故につながることがあります。

 

重心以外の方向に受け口を作って倒す場合は、追い口にくさびを打ち込んで木全体を少し傾けたり、ロープや金属製のワイヤーで幹を引っ張ったりする別の技術が必要になり、難易度が大きく上がります。

またつるの幅が左右で不均等な場合、木はつるが多く(厚く)残っている方向に傾きながら倒れていく性質があります。

このため左右の厚さが均等で、整った台形や長方形のようなきれいな形のつるを残すことが、正確な伐倒には欠かせません。

つるを引きちぎりながら木が倒れた様子。ツルの幅は左右均等(長方形)になっている

 

左右の厚さが不均等なつる。形が整っていない。

 

チェーンソーを使わずにノコギリを使う場合も伐り方は基本的に2つのどちらかになります。

ノコギリを使う場合、幹の直径が10センチを超えてくると腕が疲れて体力的にしんどくなる場合が多いでしょう。

一方、オノを使って大木を伐る技術も日本では江戸時代ころから発達し、木曽地方などで盛んに行われていました。

 

しかし戦後はチェーンソーに置き換わり、林業現場でオノを目にする機会は現在ほとんどありません。

ただ若手林業者を含めて近年、オノを使った昔ながらのシンプルな伐倒に再び着目する動きがあり、今後再び盛り上がりを見せる可能性を秘めています。

 

重心を読む!

伐倒の際に大切になるのが「木の重心がどちらを向いているか」という点です。

幹の傾きや枝の生え具合で、明らかに重心が分かる場合は問題ないのですが、判断がつきにくいケースも多くあります。

そうした場合、伐っている最中に自分の方に倒れてきて下敷きになったり、追い口を入れている最中に伐倒方向と反対側に傾いてきて、チェーンソーのガイドバーが挟まれて抜けなくなったりといった事故やトラブルが珍しくありません。

 

重心方向を見極めるポイントのひとつに「枝が旺盛に伸びている向きを観察する」という方法があります。

枝は意外と重い場合が多く、それが高い場所に生えていると、さらに重心に影響を与えます。また風が吹いているときの木全体の揺れ方を見ることも、重心の判断材料になります。

 

こうした視点から重心を総合的に判断するためには、背中を幹にぴったりと付けて、木の真下から樹上を見上げて木全体の枝ぶりや傾き、揺れ具合を確かめることが欠かせません。

もちろん少し離れた複数の位置からも木全体を観察します。重心を見極めにくい場合は、このように、いろいろな角度から木を眺めて判断材料を集めます。

重心の見極めには、木全体の傾きや枝ぶりなどの入念な観察が必要

 

掛かり木を防ぐ!

安全に木を伐るために大切なのが「掛かり木」を防ぐ技術です。

掛かり木とは、木が倒れていく途中で、隣接する別の木の枝や幹に接触して、地面に設置する途中で引っ掛かってしまう状態です。

大きくて重い木が掛かり木になると、手で押したり、引いたりしてもビクとも動きません。

 

この状態を解消して無事に地面に接地させるのは多くの場合、大きな手間が掛かり、また危険を伴います。

身近にある丈夫な枝やナイロン製のスリングなどを使い、テコの原理で人力で幹を揺すって動かしたり、林業用の手動牽引器具で引き倒したり、重機で持ち上げたりする方法がありますが、いずれも作業に慣れた人と一緒に行わないと事故につながる可能性があります。

 

掛かり木を防ぐには、上述したように枝の生え方を詳しく観察することが大切。

例えば「この木がゆっくりと倒れていく場合、あそこの太い枝の先が、隣の木のあの枝に触れそう。でも枝同士が折れ曲がることで、掛かり木にならずに何とか無事地面まで倒れてくれそうだ…」などとイメージを膨らませます。 

 

このときに重要なのが「隣の木のY字型の枝の分かれ目の部分に木が倒れ込んでしまうと、絶対に掛かり木になり、外すのは難しい…」などという最悪のケースを想定することです。

「あそこに倒れてしまったらアウト…」という絶対に避けたい事態から逆算して、伐倒の流れをイメージしていきます。

掛かり木の処理には多くの労力や危険を伴うことが多い

 

動画頼みの初心者作業は危険!

せっかく木の重心を見極めても、別の木や建物、電線などがあるため、重心の方向へ倒せない場面も多くあります。また掛かり木を避けるために、あえて別の方向に倒す場合もあります。

その場合、上述したように追い口にくさびを打ち込んだり、林業用の手動牽引器具を介してロープや金属性のワイヤーで引っ張ったりして伐倒方向を調整します。

いずれも経験者向きの作業で、動画などを見ながら初心者だけで行うのは危険を伴います。

 

木の重心を見極め、そして安全に倒すにはどんな技術や道具が必要なのかを悩みながら考えることも伐倒の難しさと面白さ。

ただどんな場合でも、少しでも不安があればプロや経験者に相談することが無難です。

また想定外の事態が起こりやすい伐倒作業は、一人で行うのは禁物。必ず二人以上で作業をするようにします。

木の重心を変えるために使われるくさび

 

木の伐採は現在は通年で行われていますが、冬場の作業が適しています。

「木の含水率が低く、木材として使う場合に腐りにくい」「落葉樹の場合、葉が落ちているので伐った後の枝の片付けが楽」「落葉している場合、周囲の別の木を含めて枝の生え方を観察しやすい」「下草などが枯れているので、林内を歩きやすい」といった利点があるためです。

すぐに伐採に取り掛かるのは難しくても、チェーンソー作業の講習会に参加してみたり、葉が落ちて見通しが良い冬の時期に、「伐倒者目線」で木々を見渡してみたりしてはいかがでしょうか。

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