今年も「実りの秋」が訪れました。
毎年、秋になれば野山でもたくさんの山の幸に出会うことができます。
特に人気があるのが秋の味覚の代表格ともいえる天然キノコ。
食べておいしく、見て楽しいキノコ探しは、渓流釣りと同じように、一度ハマると抜け出せなくなる中毒性があります。
まだまだキノコ採り初心者で、日々悩みながら種類を覚えている自分自身の経験から、キノコ採りの魅力と注意点を振り返りたいと思います。
ちょっとした知識を身に付けることで、物件探しの道中、思わぬ味覚に出会えるかもしれません。

自分で採った天然キノコは格別の味わい
キノコ採りは少数派?
「山でキノコを採る」と言うとほとんどのひとから聞かれるのが「毒キノコが危なくない?」という反応。
「山のキノコ=毒キノコが多い」というイメージは、かなり広く浸透しているようで、林業に携わるひとからも「キノコには手を出さない」という声が多く聞かれます。
ちなみに私が勤めていた八ケ岳山麓の林業会社では社員十数人のうち、キノコ探しに精を出していたのは私を含めて3人ほど。
「春の山菜は採るけどキノコはやらない」というひともいました。
こうした背景には毎年この時季になるとニュースで取り上げられる毒キノコによる食中毒事例があるようです。
キノコによる食中毒で多いのが下痢や嘔吐などの症状ですが、幻聴や幻覚、ときには死亡例といった重い中毒症状が指摘されている種類もあり、山のキノコに対する危険なイメージを植え付けています。

毒キノコへの注意を呼び掛けるポスター
キノコの覚え方
キノコの種類を覚える上で理想的なのは、いわゆる「キノコ採りの名人」と一緒に山に入って教えてもらうこと。
しかし特に都市部に住んでいると、そうした幸運に恵まれる機会はなかなかありません。
そこで手軽に参加できるのが各地で開かれているガイド付きのキノコ採りツアー。
種類や特徴を詳しく教えてもらえたり、採れたてのキノコを現地で味わったりできるのが魅力です。
一方、キノコ採りが盛んな地方では「名人」とはいかないまでも、毎年決まった場所で決まったキノコを採ることを楽しみにしている愛好者もいます。
そうしたひとにキノコ採りに連れて行ってもらい、まずは食べられるキノコを一種類でも覚えることが、天然キノコ採りの世界に足を踏み入れる第一歩となります。
私が暮らしている山梨県の八ケ岳山麓では、カラマツ林に生えるハナイグチやシロヌメリイグチといったキノコが比較的簡単に見つけられ、初心者でも判別しやすいため人気があります。
食材としておなじみのキクラゲも見分けやすいキノコの一つ。
春から秋にかけて枯れ木や倒木に生えますが、冬場でも木に付いた状態のままでカラカラに乾燥したものを時折見かけます。
採取して水に浸けておくと、水を吸って膨らみ、生のような食感に戻るユニークなキノコです。
また夏の時期には、鮮やかな濃いオレンジ色の傘が特徴のタマゴタケも比較的判別しやすく、人気があります。

ハナイグチ

キクラゲ

タマゴタケ
一方、隣の長野県では毎年秋になると、各地域の保健福祉事務所に「きのこ鑑別相談所」が開設され、採ってきたキノコを持ち込むと地元のキノコ採り名人などが無料で鑑別してくれる取り組みがあります。
自治体が開設する保健所は毒キノコによる食中毒予防も業務のひとつ。最寄りの保健所が天然キノコの鑑別に応じてくれるかどうか、問い合わせてみてもよいでしょう。
図鑑やガイドブックを見比べよう
場所や時間を問わずに活用できる心強い味方が市販のキノコ図鑑やガイドブック。
身近に相談できる「名人」がいない私自身は、この時季、キノコ図鑑を持ち歩いて、野山や道端で見つけたキノコの鑑別に活用しています。
ここで重要なのが複数の図鑑を見比べること。
天然キノコは個体差が大きく、出始めの幼菌と成長した成菌では、外観が大きく変わるケースが少なくありません。
また地域や標高、雨量や気温、湿度といった環境条件によって外観が変わる可能性もあります。
このため同じキノコでもそれぞれの図鑑によって、掲載されている写真の様子や見分け方に関する記述が少しずつ異なる場合があります。
できるだけ多くの情報を参考にしながら総合的に判断し、極力間違いなく種類を鑑別する。
そのためには、複数の図鑑やガイドブックを手元に用意するのがベストと考えています。
また地域によって生えるキノコの種類が異なるため、例えば「○○県のキノコ」といったタイトルの本が地元の出版社などから刊行されていれば、「セルフ鑑定」の強力な助っ人になります。
もし絶版になっていたら、ネットで探してでも手に入れる価値があるかもしれません。

判別に役立つさまざまな図鑑やガイドブック
便利なインターネット 過信に注意!
アナログ的な図鑑やガイドブックに加え、インターネットから得られる情報も判別の大きな参考になります。
さまざまな解説文や画像、実際に野山で採ったひとのブログなどが掲載されており、図鑑だけでは得られない豊富な情報にアクセスできます。
さらにGoogleなどが提供する画像検索機能はスマホのカメラで写すだけで、同一もしくは類似のキノコの検索結果を表示してくれる画期的な仕組みといえます。
一方、FacebookなどのSNSにもキノコ採りの愛好者でつくるさまざまなグループがあり、山で採ったキノコの写真をアップしたり、どんな種類のキノコかを画像をアップして質問したりと、活発なやり取りが展開されています。
日本各地で今、どんなキノコが採れているかがリアルタイムに分かる面白さがあります。
情報量ではアナログの図鑑をはるかに凌ぐネットの世界ですが、個人による情報発信が中心で、正確さに欠ける情報が混在している可能性に注意が必要です。
情報の信頼性の面では、きちんとした出版社が専門家に執筆や監修を依頼した図鑑やガイドブックに及ばないと考えています。
このため私自身はメインは図鑑やガイドブックとし、インターネットは「おおまかな当たりを付ける」ような感覚で、なるべく補助的に活用するようにしています。
出会ったひとから情報収集
図鑑と同じようにアナログだけれども有効なのが、山で出会ったきのこ採り愛好者に教えてもらう方法。
今の季節はどんな場所でどんなキノコが採れているのか?恥ずかしがらずに聞いてみると、収穫物を見せながら詳しく教えてくれるひとが意外に多いはずです。
キノコ採りを楽しんでいるのは山歩き感覚のシニア世代が中心。
山の中での情報交換や立ち話も楽しみの一つ。そんな雰囲気のひとが多いと感じます。
私自身、シロヌメリイグチやナラタケなどのキノコを山で出会ったひとから教わりました。
もちろん直売所などへの販売目的で採っているプロのような人からはあまり情報を得られないかもしれません。
またマツタケのように、特定のエリアを対象に、採取する権利が入札などで売買されているケースもあります。
気付かずにそうした場所に入って採っていると警察に通報されてしまうことも。
キノコや山菜類の採取禁止区域に関する情報も含めて、地元のひとなどから積極的に情報収集するようにしたいものです。
山登りや渓流釣りと同じように、フィールドで出会ったひとに積極的に話し掛けることで、その地域の自然をさまざまな角度からより深く知ることができるはずです。

山の中で出会ったひとから生の情報を教えてもらおう
最初は少量から
自分で採った天然キノコを図鑑などで食用と判断した場合、最初に食べる量は少量に抑えた方が無難です。
私自身の苦い経験となりますが、数年前、山仕事中に大きな白いキノコの群生を見つけ、地元の詳しいひとにも見てもらって食用のオオイチョウタケと判断。
持ち帰って食べたところ、夜半にトイレに何度も駆け込む事態になりました…。
このときは一緒に持ち帰って食べた職場の先輩と同僚はまったく症状が出なかったので、食べた量や体質、調理法も関係していたのかもしれません。
ちなみにこのときはチーズを載せてオーブンで焼いて調理しましたが、食べる量を少量に抑えていればお腹を壊さなかったのかもしれません。
また一般的には一度、下ゆでをしてから調理をすることで食中毒のリスクが減るケースもあるようです。
それ以降はしっかりと火を通す意味でも基本的に一度、下ゆでをしてから調理し、最初は少量ずつ食べるようにしています。

初めてのキノコは下ゆでをしてから少量ずつ食べるのが無難
ただ私自身、天然キノコを食べた後に体調を崩したのはこの一度だけ。
名人と呼ばれるひとには遠く及ばない初心者ですが、「食べるか食べないか」の見極めのポイントを押さえていれば、過度に食中毒を恐れる必要はないと感じています。
毎年秋になったら、キノコ図鑑を片手にフィールドに出掛けてみてはいかがでしょうか。