フィールド整備の頼もしい味方 刈り払い機を使いこなそう ②

残暑が続き、青々とした草木の成長がまだまだ旺盛な晩夏の日本の野山。

今回はフィールド整備の頼もしい味方となる刈り払い機の実践的な使い方をご紹介します。

たかが草刈り、されど草刈り・・・。

 

ちょっとしたコツで作業がはかどり、身体の疲れも減らすことができます。

 

基本の使い方① 下半身を使うと疲れにくい

刈り払い機は読んで字のごとく、草を刈り、刈った後の草を一定方向に払いのける機械。

操作棹に付いたグリップを両手で握り、ゆっくりと前進しながら右方向から左方向に機械を振り動かし、一定方向に草を刈り進めていきます。

 

操作棹の先に取り付けられたチップソーやナイロンコードなどの回転刀は、半時計回り(左回り)に回転しているため、それに合わせる形で右方向から左方向へ操作棹を振り動かします。

体の負担を減らすためのポイントが「刈り払い機を腕で振らず、腰(下半身)のひねりを上手に使って振る」という点。

 

腕だけで振ろうとすると、どうしても肩や腕、手首などに負担が集中します。

腰のひねりを中心とする下半身の動きを先行させ、それに合わせる形で腕や上半身を連動させるようにすると、長時間の作業でも疲れにくくなります。

 

下半身の動きに上半身を連動させて刈るのがポイント

 

基本の刈り方②「左のエリアから」

刈り払い作業では進行方向に向かって左側に刈った草が寄せられます。

このため進行方向に向かって左側のエリアから順番に刈り始めるのが基本です。

土地の境界など終点のラインまで刈り進んだら、いったん刈るのを止めてスタートのラインまで戻り、そこから再び続きを刈ります。

終点のラインからスタート地点まで戻る形で続きを刈り始めると、刈り終わった草が、まだ刈っていないエリアに寄せられてしまい、後々の作業がしにくくなるためです。

 

身体の負担を減らし、かつきれいに仕上げるには、なるべく一定の刈り幅とペースでまっすぐに刈り進むのがコツ。

欲張って刈り幅を広げすぎると刈り残しが出やすい上、疲れやすくなるので、まずは80センチ程度の刈り幅を意識するのがよいでしょう。

 

基本の刈り方③「下から上」

山林や道路の法面(のりめん)など、フィールド整備では斜面で草刈りをする機会は意外と多いものです。

刈った後の草を斜面の下に落とすイメージで、等高線に沿って斜面の下の方から順番に刈り進めるのが基本。

平らな場所と同じように、一定方向に向けて刈り進み、終点のラインまで到達したら、いったん刈るのを止めてスタートのラインまで戻り、そこから今刈った場所の一段上を刈り始めます。

 

スタートのラインに戻りながら刈っていくこともできますが、斜面の下側から上側に向けて操作棹を振り上げる動きになるため難易度が上がり、身体も疲れます。

コツや慣れが必要で、熟達者向けです。

 

傾斜が強い斜面での草刈りには両手ハンドルタイプよりもループハンドルやツーグリップと呼ばれるハンドルが付いたタイプがおすすめ。

刈り払い機の種類については前回のコラムで取り上げています。

 

進行方向左側、斜面の下側から上側に向かって順番に刈るのが基本

 

基本の刈り方④「ゾーニングをする」

地面を覆い尽くす丈の長い雑草やつる性の植物、そしてバラやキイチゴなどの低木・・・。

刈り払い機を用意していざ現場に着いても、特にフィールドが広い場合は、どこから手を付けていいのか悩んでしまうことがあります。

 

そこでお勧めなのが、作業を始める前に土地を大まかにゾーニングしておくこと。

同じ土地でも、よく観察すると草の生え方や傾斜、石や木立といった障害物の有無などに違いがあり、刈りやすさが変わってくることが少なくありません。

作業の難易度や天候、身体の疲れ具合などに応じて、最初に手掛ける場所、最後に刈る場所-などとゾーニングをしておくと、作業に取り掛かりやすくなります。

 

例えば、まずは土地全体の見通し確保とウォーミングアップを兼ねて、平らで障害物が少ないエリアに着手。

斜面や低木が茂った場所など刈りにくいエリアは残しておいて、最後に仕上げる方法もよく採られます。

また隣地との境界が分かりにくい場合は、境界杭などを目印にして隣地との境界沿いを最初に刈ってラインを作っておくと、対象エリアが明確化されて作業をしやすくなります。

 

一見すると、どこから手を付けてよいのか分からないような荒廃地でも、ひとつの取っ掛かりができれば光が差してきます。

 

土地の状態やロケーションを観察し、刈る場所をゾーニングするのも一案

 

応用技術

何年間も放置された土地の場合、大人の背丈を超える草が繁茂しているケースも少なくありません。

こうした丈が長い草を刈るときは、一度、真ん中あたりで切って半分ほどの草丈にした後、根元付近を切る「二段切り」をすると刈りやすくなります。

場合によっては3回以上に分けて切ることもあります。

 

かん木などを切るときは、チップソー使用の場合は、「最大で直径5センチ程度までの小径木とする」ことが刈払機取扱作業者向けの安全衛生教育テキストに記載されています。

よく切れる刃を取り付ければこれ以上の太さの木を切ることが可能ですが、後述するキックバックなどの危険があるため、初心者は控えたほうがよいでしょう。

 

低い位置から生えた樹木の枝が邪魔をして刈りにくい場合もあります。

こうしたときは刈り払い機の刃を使ってあらかじめ邪魔な枝を切り、刈り払い機を振るスペースを確保すると作業をしやすくなります。

ただ作業姿勢が不安定になるなどの理由で、刈り刃の位置を腰より低くして使うことが基本とされています。

前回のコラムでも触れましたが、細いかん木や木の枝を切る場面が多いフィールドでは、ナイロンコードを使うとコードが切れやいため、チップソーの使用が向いています。

 

車や建物の近くで刈るときには、小石や枝などの飛散に注意が必要です。

特にナイロンコードは小石や土などを巻き上げやすく、10メートル以上離れた場所に小石が飛散することも珍しくありません。

建物の窓ガラスや車のフロントガラスなどに飛散物が当たると簡単にひびが入ります。

車の場合は面倒でも離れた場所に移動させたり、建物の近くで刈るときには、コンパネ(合板)を立ててガードしたりするなどの対策が有効です。

 

窓ガラスなどへの飛散の恐れがある場所ではコンパネ(合板)を立ててガード

 

安全のために注意したいこと

刈り払い機は刈り刃を高速回転させて使う特性上、安全面でさまざまな注意点があります。

危険防止のために意識したい主なポイントを挙げました。

 

① キックバック防止

回転中の刈り刃が、木の幹や切り株などの硬いものに当たり、回転方向の反対側に跳ね返る現象。

刈り刃を時計に見立てた場合に「12時~3時」の間の角度に木の幹などが当たると置きやすくなります。

刃の前方左側3分の1の部分を使って刈るとキックバックが起きにくいので意識するようにします。

 

チップソーの対象物に当てる部分とキックバックを起こしやすい部分

 

② 飛散物対策&すね当て

特にナイロンコード使用時は、場所によっては小石などが激しく飛散し、作業者の顔面に当たることが少なくありません。

作業用の保護眼鏡や保護ゴーグル、刈り払い作業用のバイザーなどの着用が必須です。

 

チェーンソー作業用のメッシュバイザー付きヘルメットでも代用できますが、飛散した小石や砂がメッシュ部分を通り抜けたり、バイザーで覆われていないあごの下側部分から眼に飛び込んできたりすることがあります。

小石などの飛散が多く想定される場所では「メッシュバイザー+保護眼鏡」のように、複数の防護用具を組み合わせて使うと安全性が高まります。

麦わら帽子などに取り付けるタイプのメッシュ状の草刈り用ガードネットも比較的安価で顔面への飛散対策に有効です。

 

メッシュバイザー付きヘルメット(左)

眼鏡の上から掛けられるオーバーグラスタイプの保護眼鏡

 

太ももや足首部分の保護も意外と大切です。

飛散した小石が太ももに直撃して痛い思いをすることが、特にナイロンコード使用時には時々あります。

チェーンソー作業用のチャプスや厚手の作業ズボンなどを着用すると対策になります。

 

市販されている草刈り専用の「すね当て」は、チップソーなどの刈り刃が万一、すねの部分に当たった場合のけが防止を目的に作られています。

傾斜地などでチップソーを使う場合は、身に付けておくと安全性が高まります。

 

③ 切れる刃を使う

チップソーの場合、切れ味が落ちると作業効率が落ちるほか、手首など身体への負担も増えます。

切れない刃でかん木や枝などを切ると、刃をたたきつけるような動きになりやすく、キックバックの危険も高まります。

一日使ったら、次回は新しい刃や研磨済みの刃に取り替えたいものです。

 

チップソーは回転中、石に当たると刃先が鈍ったり、チップが取れたりして切れ味が落ちます。

また何度も土に当たると、同様に刃先が鈍ります。

ターゲットの草だけを狙って刃先を当てる技術を身に付けることで、刃先の磨耗を最小限に抑え、切れ味を保てるようになります。

 

④ 蜂刺され

見通しが悪い草むらやヤブの中での草刈りは、蜂に刺される危険と隣り合わせです。

とくにスズメバチやアシナガバチなどの活動が活発になる夏から秋にかけては要注意。

夢中で草を刈っていると、かん木や岩のくぼみなどに作られた蜂の巣が眼に入らないことが多く、蜂が飛び出してきて初めて気付くことがあります。

 

蜂が巣を作りそうな場所は、経験を積むと何となく分かるようになりますが、それでも運悪く刺されてしまうこともあります。

そうした場合に備えて、蜂やヘビなどの有害生物の毒を吸いだす「ポイズンリムーバー」は常に携行したいものです。

蜂に刺された場合の症状は体質によって異なるため、草刈りを専門に行う林業者の多くは、事前に医療機関で蜂アレルギーの検査を受け、結果に応じて自己注射薬「エピペン」の処方を受けています。

 

蜂やヘビなどの毒を吸い出す「ポイズンリムーバー」

 

⑤ 熱中症

草刈りは基本的に日陰がない場所での作業となります。

このため気温と湿度が高い時季は熱中症の危険が高まります。

こまめな休憩と水分、塩分補給は欠かせません。

 

仕事と異なり、プライベートのフィールドで一人で作業をする場合、没頭して時間の感覚を忘れてしまうことがあります。

「40分に一回は日陰で休憩する」などペースを決めて取り掛かるようにしたいものです。

 

草刈りで健康増進&収入も?!

草刈りは決して楽な作業ではありませんが、見方を変えれば、草を刈りながら同時に筋トレや有酸素運動ができる一石二鳥の仕事とも言えます。

特に斜面での草刈りは足腰や体幹が鍛えられ、フィットネスクラブに通わずともトレーニング効果を期待できます。

 

何より目一杯、身体を動かした後のビールやご飯はおいしく、「今日も一日がんばった」と心地よい疲労感に浸れるメリットも。

刈った場所と刈っていないエリアの景色の差は一目瞭然で、仕事の成果が目に見えて分かる満足感もあります。

 

一方、農山村部では農業や林業、造園業などを中心に、草刈りの仕事は多くあり、高齢化や人口減少の影響で人手不足の事業者も少なくありません。

農山村への移住後、刈り払い機が一本あれば、多少の収入を確保できるー。そんな可能性も広がっています。

 

農山村では草刈り仕事の需要は意外と多い

 

初心者と熟達者では技術やスピード、仕上がり具合に大きな差が生まれ、フィールド整備はもちろん、移住後の収入確保につながる可能性もある草刈り。

単純だけど、意外と奥深い世界とも言えそうです。

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