一年で最も草丈が伸びるこの時期。
農村部や山間の別荘地などでは、畑や庭の草刈りに追われる季節となります。
今回は草刈りをはじめ、キャンプ用のフィールド整備でも頼もしい味方となる刈り払い機の種類や購入時のポイントを紹介します。
ハンドルの形状で変わる操作性
ガソリンエンジンやバッテリーの動力で、金属製の刃や樹脂製の細いひもを高速回転させ、草や細い木を刈り取る刈り払い機。
農村部では多くの家庭で最低1台は保有しています。
基本的な造りは各メーカーとも共通ですが、ハンドル部分の形状が数種類に分かれているので、用途に合ったタイプを選ぶことが重要です。
ホームセンターなどで一般的に販売されているのが「両手ハンドルタイプ」などと呼ばれる自転車のハンドルのような持ち手が付いた機種。
地面が比較的平らな広い面積の場所を刈るのに適しています。
上手に使うと腕や腰への負担を減らせ、畑や芝生など平坦で大面積の場所を効率よく刈ることができます。
一方、山林や土手など傾斜が強く、さらに地面に凹凸があるなど地形の変化が大きい場所に向くのが「ループハンドル」や「ツーグリップ」と呼ばれるハンドルが付いたタイプ。
作業中の身体のポジションを変えやすく、使い慣れると草を刈る際の刃の角度や高さを調整しやすいため、狭く、細かい場所でも使いやすい特徴があります。
やぶや細い木が生い茂るなどハードな場所を刈る作業にも向いています。
このため傾斜が強い山の中で、植林した苗の周りの草を正確に刈ることが求められる林業の下刈り作業では、ほとんどがこれらのタイプが使われています。
一方で、広くて平らな場所を刈るときは、両手ハンドルタイプと比べると体勢的に刈りにくく、ひとによっては腰が痛くなりやすいといった弱点もあります。

① 両手ハンドルタイプ(手前)とループハンドルタイプ(奥)の刈り払い機

② ツーグリップタイプの刈り払い機
自分が刈る場所のロケーションに応じて、平坦な場所が多い場合は両手ハンドル、斜面や複雑な地形が多い場合はループハンドルやツーグリップを選ぶのが良いでしょう。
予算上の問題もあるかもしれませんが、土地の広さやロケーションによっては、両手ハンドルタイプと、ループハンドルまたはツーグリップタイプをそれぞれ用意し、刈る場所に応じて使い分けられたらベストです。
刈り払い機は写真①②を含めて、専用のバンドで肩に掛ける「肩掛け式」が主流です。
エンジン部分を背負うタイプの「背負い式」もあり、腕や手に掛かる負担が少ないため愛用者がいますが、初心者はまずは、製品ラインナップが多い肩掛け式がおすすめです。

③ 肩掛け式の刈り払い機で使う専用のバンド
写真のような片掛け式のほかに、背負うように両肩に掛けるタイプもある
ハードユース向けのエンジン式
現在、市販されている刈り払い機のほとんどが2サイクルエンジン搭載のタイプで、排気量は20~30CCが中心です。
30CC以上の排気量はプロ向けで、パワーが増える半面、重くなるため慣れないと身体への負担が増します。
通常の使用なら25CC程度の排気量で充分でしょう。
刈り払い機に金属製の「回転刈刃」(金属刃)を取り付ける代わりに、樹脂製の「ナイロンコード」を付けて刈る場合は、エンジン部分を中心に機械に掛かる負担が増えます。
20CC程度の排気量だと回転が遅くなるなどして効率的に刈れない場合があるため、25CC程度の余裕を持った排気量のモデルを購入するのがおすすめです。
2サイクルエンジン搭載のタイプは、ガソリンにエンジンオイルを一定割合で添加した「混合油」を燃料として使います。
エンジンオイルはホームセンターや農機具店などで購入できますが、ガソリン携行缶でガソリンを購入し、エンジンオイルを調合する作業は手間が掛かる上、都会などでは燃料の保管場所にも気を使います。
都心から通いながらキャンプ用のフィールド整備などを続ける場合は、まずはそうした道具類を保管するための物置や小さな小屋、コンテナなどを現地に準備すると便利でしょう。

ガソリンの購入や保管に必要となる専用携行缶

2サイクル用エンジンオイル
手軽なバッテリー式も
一方、ここ数年、各メーカーから新商品の発売が相次いでいるのが充電式バッテリーで駆動するタイプ。
混合油を用意する必要がなく、車内に置いてもシートなどが汚れにくい、エンジン式に比べて軽量で、スイッチ一つで運転と停止ができるため、腕の力が弱いひとでも扱いやすいーといった利点があります。
充電式バッテリーを使うコードレス掃除機が普及する中、メーカー各社が開発に力を入れており、農村部では女性を中心にバッテリー駆動の刈り払い機を扱う場面を目にする機会が増えてきました。
刃の回転の正逆をボタン操作一つで切り替えられる機能など、エンジン式にはない機能を搭載したタイプも登場しています。
林業の世界でも、アーボリストなどと呼ばれる樹上伐採に携わるプロの多くが、軽量で始動が楽なバッテリー式チェーンソーを樹上で使っています。
しかし、バッテリー式製品は、長時間の使用には複数の予備バッテリーの携行が欠かせず、またアウトドアでは充電が難しい点などに注意が必要です。
ただソーラー発電を組み合わせたポータブル電源やEVが普及する中、アウトドアでもバッテリーの充電をしやすい環境が整ってきたとも言えます。
金属刃(チップソー)
金属刃「チップソー」と、樹脂製の細長いひも状の「ナイロンコード」。
どちらを使っても草を刈ることができますが、それぞれの特徴を理解し、使い分けることで作業の効率化につながります。
金属刃にはチップソーや笹刈刃、丸のこ刃などの種類がありますが、現在はチップソーが主流となっています。
チップソーは超硬素材のチップが刃先に埋め込まれた刈刃で、石などに当たっても刃先が鈍りにくく、切れ味が持続しやすいのが特徴。
使い方に慣れたひとなら、よく切れる刃を使うと、ビールびん程度の太さの木もそれほど時間をかけずに伐ることができます。

チップソー
チップソーの刃は比較的丈夫ですが、使い方によっては半日程度で切れ味が落ちます。
作業効率が落ちて身体への負担も増すため、少なくとも一日使ったら翌日は新しい刃か研ぎ直した刃に替えたいものです。
また刃先のチップは石やコンクリートに当たると取れてしまうことがあります。
一枚の刃で5箇所程度、チップが取れてしまった場合は新しい刃に交換したが良いでしょう。
チップソーの刃は研磨用のダイヤモンドディスクを取り付けたディスクグラインダーを使って研ぐことができます。
研ぎ方は人それぞれにこだわりがあるようですが、簡易的な方法だと慣れれば5分程度で一枚の刃を研ぎ終わることができ、切れ味がよみがえります。
ディスクグラインダーは数千円、ダイヤモンドディスクは一枚1000円以下で、それぞれホームセンターで購入できるため、研ぎ直して使うことが経済的で、資源の有効利用にもつながります。

ディスクグラインダーを使ったチップソーの研磨作業
新品のチップソーは刃先のチップが取れない限り、通常の使い方なら3~4回程度は研ぎ直しが可能です。
動画投稿サイトには、いろいろな研ぎ方が紹介されていて参考になるでしょう。
ナイロンコード
農家や造園屋業者などを中心に使われる機会が多いナイロンコードは、刈り払い機に直径4~5ミリ程度の非常に丈夫な細い樹脂製コードを2本取り付け、高速回転させて草を刈る道具です。
「ナイロンカッタ」や「ひも」などとも呼ばれます。

ナイロンコード
刈り払い機の先端に円形の専用アタッチメントを取り付け、25センチ程度の長さに調節した二本のコードを左右対称の位置になるようにセット。
これで金属刃と同じように草を刈ることができます。
刈っているうちに磨耗して短くなったコードは一度、エンジンを止めてその分だけ伸ばしたり、取り替えたりして使います。
切断するように草を刈っていく金属刃と異なり、ナイロンコードの場合は粉砕するように刈るのが特徴。
コードの長さを長めに取ることで、回転する直径が大きくなり、「点」ではなく「面」で効率よく刈り進められるのが特徴です。
またコンクリート製の建物基礎の近くや石垣のまわりなど、金属刃では、刈りにくい狭い場所でもきれいに刈ることができます。

ナイロンコードを取り付けた刈り払い機
半面、株立ちが多くて丈が長い草、茎の部分が木質化しているような硬い草や低木などは刈りにくく、コードの磨耗が激しくなります。
また柔らかくて丈が長い草の場合も、コードが草を巻き込んでしまい、うまく刈れないことがあります。
刈ろうとしているエリアがどんな植生で、金属刃とナイロンコードのどちらが向いているか。
その見極めも大切な技術の一つと言えます。
ナイロンコードを刈り払い機に取り付けるためのアタッチメントはさまざまな製品が販売されています。
ナイロンコードを回転させながらアタッチメント部分を地面に押し付けてやると、遠心力でコードが少しずつ自動的に延びる便利なタイプもありますが、造りがやや複雑なため、使い方によっては壊れやすい場合があります。
初めて使う場合は、なるべくシンプルな造りのものを選ぶのが良いでしょう。
今回は刈り払い機や付属品の種類を中心に取り上げました。
フィールドでの実践的な使い方については、後編にてご紹介したいと思います。