前回のコラムでは、フキノトウやヤブカンゾウといった地面から生える「葉物系」の山菜を中心に取り上げました。
今回は「山菜の王様」と呼ばれるタラの芽や、「山菜の女王」の異名をもつコシアブラなど、葉物系よりも遅れて芽を出すことが多い「木の芽系」の山菜を中心にご紹介します。
採取のハードルは少し上がりますが、山の中で見つけたときの喜びはひとしお。山菜らしい苦みや香りを楽しめることでしょう。
山菜の王様「タラの芽」
山菜の代名詞と言えるほどポピュラーなのが、タラノキの新芽のタラの芽。

大きなものだと大人の親指を超えるサイズに成長するタラの芽
独特の苦みやしっかりとした歯触りが特徴です。
採取時期は4~5月頃。山の木を伐採した後の開けた場所や林道沿いなど、陽当たりが良い場所に生え、棒状の細い幹に鋭いトゲを付けます。
見分けやすい入門向きの山菜ですが、タラの芽は背丈以上の高い場所に付いていることもおおく、
長い柄を付けた鎌を使って刈り取ったり、木の枝などで幹全体を手元にたぐり寄せたりして採るなど工夫が必要なことも。
採取するときは手にトゲが刺さらないように注意が必要です。
天ぷらで食べるのが一般的ですが、湯がいてポン酢をかけるお浸しもおすすめ。
生のまま薄切りにし、薬味のような感覚で熱々のおみそ汁に入れてもストレートに風味を楽しめます。
栽培も盛んなので、シーズンになると毎年、地域の直売所などの店頭にたくさんのパック詰めされたタラの芽がならぶ光景を目にします。
山菜の女王様「コシアブラ」
タラの芽に遅れて採取シーズンが始まるのがコシアブラの新芽。

たくさんの新芽を付けたコシアブラの稚樹
やや紫がかった茎の先に5枚の小葉があり、茎の根もとには、はかまが付いています。
新芽全体に白色の産毛が生えているのが特徴。タラノキと同じウコギ科ですが、幹の色は白っぽく、木質は柔らかめでトゲはありません。
「アブラ」という名前が付く通り、ほろ苦さとともにコクのある味わいが特徴で、
天ぷらのほか、軽く湯がいてから刻んで炊き立てのご飯に混ぜる「コシアブラご飯」も人気です。
広葉樹の森の中やアカマツ林の中などに生えますが、慣れないと他の木と見分けるのが少し難しいかもしれません。
10メートル程度まで成長しますが、大きな親木の周りに高さ1メートル程度の稚樹がたくさん生えていることも多く、こうした採りやすい株を見つけるのが採取のコツです。
その他の、主要な山菜
名前の通りウコギ科に属するウコギも、いかにも山菜らしい香りやほろ苦い風味を楽しめます。

ウコギの新芽 新芽の付け根には「はかま」が付いている
食用にするのはタラノメやコシアブラと同様に新芽ですが、葉が薄くて小さいため地味なイメージがあり、山菜ファンの中でも意外と採るひとは少なめ。
陽当たりが良い道路脇などに生える落葉低木で、枝に鋭いトゲがあります。
新芽はコシアブラのように5枚の小葉に分かれており、葉を一枚摘んで口に入れるといかにも山菜らしい苦みと香りが口中に広がります。
一つの株に多くの枝を付けているため、たくさん収穫しやすいのも特徴。
収穫するときは新芽の付け根に付いているはかまごと摘み採り、調理するときは、はかまを取ります。
天ぷらのほか、ゆでて水にさらしたものを炊きたてのご飯に混ぜ、シンプルに塩だけで味付けする「ウコギご飯」は、春を感じる一品として、シーズン中に一度は食卓を飾らせたくなります。
日本料理で「木の芽」と呼ばれるサンショウの若芽も手軽に採れる山菜のひとつ。

青々としたサンショウの実 天日で干してからすりつぶすと乾燥スパイスとしても使える
庭木としてもおなじみですが、山の中の日当たりの良い道路脇などにも生えます。
新芽を佃煮にしたり、焼き豆腐を使った田楽にのせるサンショウ味噌などにしたりして使うのが定番。
青い実をさっと湯がいた後、ジャムなどの小瓶に入れて多めの塩をまぶしておくとサンショウの実の塩漬けになります。
炒め物を作るときなどに塩と同じ感覚で使うと、かんきつ系のさわやかな香りとしびれるような辛さで味にアクセントがつき、つぶつぶとした食感も楽しめます。
株には雄と雌があり、雄株には実がなりません。
日本原産のアロマとして注目されているクロモジは、山地に生える落葉低木。

和製ハーブとも呼ばれるクロモジの新芽を乾燥させたお茶
森の中の別荘地に設けられた遊歩道沿いなど、身近な場所に群生していることもあります。
「クロモジ(黒文字)」という名前の通り、成長した枝は緑色のなめらかな表面に黒い斑点模様が出るのが特徴で、上品な香りと見た目から高級和菓子の楊枝には昔からクロモジの枝が使われてきました。
蒸留すると精油が採れますが、乾燥させた枝や葉をやかんで煮出すと自家製のクロモジ茶になります。
ハーブティーのようなすっきりとした味わいと香りでリラックス効果を感じられるかもしれません。
乾燥させないフレッシュの状態でも茶葉として使うことができるので、乾燥度合いに応じた味や香りの変化を楽しむのも面白いかもしれません。
このほか新緑の時期に生えるササの新芽を数本抜き取り、
熱湯を入れた魔法瓶にティーパックのような感覚で入れて作る「ササ茶」も個人的に気に入っています。
ほんのりとした甘みとすっきりとした飲み口で、家からお茶を持っていかなくても野山に出掛けたときに現地調達で簡単に作れるのが魅力です。
さて、前回、今回のコラムでは二回に分けて山菜の魅力を紹介しました。
山菜や野草の奥深い世界は、四季を通じてさまざまな形で生活を彩ってくれます。
車から降りて野山を歩くことで森林浴も楽しめます。
立ち入りが規制された私有地での採取や採り過ぎなどのマナー違反、類似した有毒植物の誤食などに十分注意して、趣味と実益を兼ねた山菜ライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。