※野生動物の解体作業の写真が掲載されていますので、苦手な方は閲覧をお控えください。
八ケ岳山麓の森の中で見つけた築47年の格安物件の敷地整備やリノベーションを紹介するコラム。今回は番外編として、野生のイノシシを一頭丸ごと解体して調理してみた体験をレポートします。
イノシシを丸ごといただく
近年の狩猟ブームもあって、私が暮らす八ケ岳山麓でも新たに狩猟免許を取ってシカやイノシシなどの猟を始める人が増えてきました。身の回りの友人知人でも女性を含む30~50歳代の比較的若い年齢のひとたちが、地元の猟友会に入るなどして、わな猟などにチャレンジしています。
2月上旬のある日の夕刻、知り合いのAさんから「若いイノシシを獲ったけど急用ができて解体できないから取りに来ない?」と連絡をもらいました。これまでも狩猟をしている知り合いからシカやイノシシの肉をもらったことは何度もありましたが、一頭丸ごとは今回が初めて。
「本当に自分でさばけるだろうか?」と不安がよぎりましたが「新鮮で良質なお肉をタダでもらえる!」という持ち前の貧乏性が勝り、さっそく軽トラで取りに行くことにしました。
軽トラで持ち帰ったイノシシ
対面したイノシシの体長は70センチ程度の雌。体毛へのダニの付着が心配でしたが、冬場のせいか一匹も見当たりません。解体のレクチャーを受ける時間もないまま慌ただしく軽トラの荷台に載せ、シートをかぶせて持ち帰りました。
シカやイノシシの脚を知人からもらって調理した経験は何度かありましたが、そのときは肉を骨から外したり、肉に付いている硬い筋や膜を取り除いたりするのにかなり苦労した記憶が残っています。
今回は毛皮も剥いでいない一頭丸ごとなので、それをさばく大変さは素人でも容易に想像できました。とりあえず解体は翌日に行うことにして、イノシシはそのまま軽トラの荷台に載せておくことにしました。
毛皮はぎに苦戦
翌日も日中は忙しく、結局、解体作業に着手できたのは午後3時半頃。日が長くなってきたとはいえ、日没までに作業を終えられるかどうか、微妙な時間からのスタートになってしまいました。
事前にYouTubeで若干予習をしてくれた妻に教わりながら、まずはイノシシの後ろ足をロープでしばって庭の木の枝に吊るします。持ち上げてみた体重は体感で40キロ程でしょうか。仕事で使っている林業用の滑車などを使えば簡単に吊るせるのですが、バタバタしていて準備できず、手元にあるのは軽トラ用のロープ一本だけ。イノシシの後ろ足にロープを結び、渾身の力でロープを引き上げて、不格好ながらも何とか吊るすことができました。
毛皮をはぐ前にまずは首筋にナイフを入れて放血を試みます。ただ息絶えてから時間が経ち過ぎているためか、それともナイフを入れた場所が悪かったためか、ほとんど血は出ません。

木に吊るして行った毛皮はぎ
次は毛皮はぎ。YouTubeで紹介されていた通り、まずは後ろ脚の両足首に切れ込みを入れ、そこをきっかけにして頭の方に向けて皮をはいでいきます。ちょうど足首から先の部分だけ靴下のように毛皮が残るイメージです。妻と二人でそれぞれハンティングナイフと台所にあった肉切り包丁を落ち、左右の脚に分かれて取り掛かります。
ただ予想通りイノシシの皮は硬くて厚く、良く切れるハンティングナイフを使ってもなかなかきれいにはがれてくれません。皮下脂肪に刃を入れていこうとしても、ときどき手元が狂って肉の部分を切ってしまい、血がにじみ出ます。ともかく時間がないので、出来栄えよりもスピードが優先。魚をさばくように下肢からお腹の正面、首筋に向かって一直線に刃を入れていきます。
最も大変だったのが背中側の皮をはぐ作業。今回は吊るしている背中側が木の幹に接する形になってしまったため、背中側の皮をはぐには一人が重たいイノシシを抱えて身体の向きを変え、その間にもう一人がナイフを入れてはいでいくという格好を強いられました。
どうにか首筋まで皮をはぎ終えたところで、足首と同じように首の周りに切れ込みを入れ、頭部と足首以外の毛皮を切り外すことができました。この頃には周囲は薄暗くなり、ヘロヘロに疲れていました。
しかし日没が迫る中、間髪を入れずに頭部を切り離す作業に取り掛かります。以前、シカの解体に慣れたひとから「関節に沿って刃を入れれば無理な力は必要なく、カッターナイフ一本でも解体できる」と聞いていたのを思い出し、勘を頼りに骨の間に刃を入れていきます。しかし関節や軟骨の位置が分からず、まさに手探り状態。もう少しで頭を落とせそうなのですが、どうしても一部がつながって外せません。
釣った魚の頭を落とすのも苦手な筆者。頭を切り離す作業は生首を切り落としているようで、一連の解体作業の中で一番抵抗を感じる部分でした。
あと一歩のところでなかなか外れない状況に焦りながらも何度も刃を入れ直して、ようやくイノシシの頭部が取れたときには大きなため息が出ました。

日没に追われながら行った解体作業
おおまかな部位別に解体
しかし解体作業はこれからが本番。ここで吊るしていた木から降ろし、丸太の上に置いた大きな木の板の上に載せ替えます。
次の大仕事である内蔵を取り出す作業は、筆者自身は少しビビっていましたが、妻が全面的に引き受けてくれました。YouTubeで予習した妻によると、肛門付近を切り過ぎてしまうと腸の内容物などが出てしまい肉が汚れてしまうとのこと。まずは後ろ脚を開くためにナタとハンマーで恥骨と思われる部分を割ります。
そのあとで大腸や小腸、そして胃や肝臓などと思われる部分をごっそりと取り出しました。心配していた通り、腸に溜まっていた内容物が少し出てしまいましたが、水で洗い流せばだ丈夫そうです。

大きなヤマ場の一つだった内蔵を取り出す作業
本当はレバーや心臓なども食べたかったのですが、今回は識別して取り分けている余裕がなく、残念でしたが毛皮と一緒にコンポストに埋めて処分することにしました。
肉の取り分けは室内で
この頃には完全に日没を迎え、車のフロントライトで照らしながらの作業になってしまいました。気温も下がってきます。でもここまで来ればひと安心。両前脚だけ切り落としてコンパクトにした後でいったん撤収し、肉を取り分ける細かい作業は自宅で行うことにしました。
居間の床にビニールシートを敷いて、その上に大きな板を並べ、魚の干物のような姿になったイノシシを置きます。明るく暖かい室内は安心感があり、気持ちにも余裕が生まれます。

日没のため、室内で行った肉の取り分け作業
しかし美味しく食べられるお肉にするには、実はここからが一番大切な工程。スーパーで売られているような状態のお肉にするにはどれ程の手間が必要なのかを思い知らされることになります。
次回の後編では、解体したイノシシからお肉を取り分ける作業や、イノシシ肉を料理した様子、そして解体や調理に役立った道具などをご紹介します!